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AKG N30 レビュー 爽やかな音のハイブリッドホン

 

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久々にイヤホンレビューです、「装着感がいい外使いホン」を探した結果購入となったこのイヤホン、早速紹介していきます。

 

AKG N30 

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オーストリアの名門音響機器メーカー、AKG。アニメ「けいおん!」で秋山澪さんが劇中で装着していたことから「澪ホン」と呼ばれているヘッドフォンの名機K701、イヤホン界でも確固たる地位を築いている数少ない名機に名を連ねるK3003など数多くのヘッドフォン・イヤホンを世に送り出しているメーカーですが、そんなAKGの中でも”新プレミアムライン”として展開されているのがNシリーズです。

 

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最近ではN5005と呼ばれる新たなハイエンドモデルも発表されましたが、今回購入したのはN30というモデル。現状Nシリーズで展開されているモデルの中で最上位モデルとなるN40と同様に1BA+1DD構成ながら音のチューニングや筐体の素材、付属品など細かい仕様が異なっており、N40よりも1万円程度安価な価格設定となっているモデルです。

 

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今回購入したのは「マットブラック」と呼ばれるカラーのモデルですが、N30には「サテンシルバー」と呼ばれるカラーもラインナップされています。シンプルで無難なデザインのため誰にでも受け入れやすそうです。

 

付属品・外観

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付属品はイヤーピース(XS/S/M/L)・フライトアダプター・クリーニングツール・メカニカルチューニングフィルター。

 

f:id:nullgadget:20180129150514j:plainキャリングケース

 

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リモコンマイク付きケーブルといった内容、リモコンマイク無しケーブルは付属していません。

 

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ケーブルは分岐部から下が布巻きとなっており、ケーブル自体の適度な太さと相まって絡みにくい印象です。

 

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リモコンマイクはスイッチの切り替えによってAndroidiOSどちらにも対応するタイプの物が採用されています。

 

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ケーブルを取り外すと左右識別が容易にできる色分けがされており、イヤホン筐体側とも同じ色とあって純正ケーブルらしい親和性の高さを感じます。

 

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MMCX端子が採用されていており一見するとリケーブルが容易にできそうに思えるN30ですが、他のケーブルを装着しようとすると本体とケーブルのオス端子側が干渉してしまうため、リケーブル時には注意が必要な模様です。実際に私も手持ちのBrise Audio STD001で試してみましたが装着できませんでした。

 

 仮にリケーブルするとなると手堅い選択肢となるのがAKG純正のアップグレードケーブル。端子は3.5mm 3極/2.5mm 4極の2モデルがラインナップされています。

 

 

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筐体は上位モデルのN40はフェイスプレート側がクロム仕上げとなり華やかな印象を受ける一方で、N30はマットブラック仕上げで精悍な印象。ただ、プラスチック感を強く感じる事もあってそこまで高級感は感じません。

 

また、非常にコンパクトな耳掛けホンのため耳への圧迫感も少なく装着感は良好ですが、個人差を考えるとこの手の耳掛け型イヤホンを購入する際には装着感の確認も含めて試聴することが望ましいのは言うまでもありません。本体下部にはベントがあるため音漏れ耐性もそこまで高いわけではなく一般的なレベルです。


 

メカニカル・チューニング・フィルター

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N30で特徴的な機能がこの「メカニカル・チューニング・フィルター」と名付けられたフィルター交換機構。 AKGのフラッグシップモデルであるK3003やNシリーズの上位モデルであるN40でも採用されている機構で、音の好みに応じてフィルターを交換できるといった機構です。N30では"REFERENCE SOUND"・"BASS BOOST"の二種類のフィルターを選択できます。

 

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上が "REFERENCE SOUND"、下が"BASS BOOST"の各フィルターですが、裏側から透かして見ると確かに違います。

 

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フィルターを外すとすぐにBAが顔を覗かせます。フィルターなしでもイヤーピースをつければ普通に聴けてしまいますが、内部機構を痛めるリスクがあるので避けておきましょう。

 

聴いてみた

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再生環境はONKYO DP-X1 or LG V10に直挿しです。

 

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フラッグシップモデル「K3003」、上位モデル「N40」同様、電気的なネットワークを一切使用すること無く、アコースティックにチューニングしているため、ハイブリッド方式でありながら、自然な音のつながりを実現いたしました。

 

この手のマルチドライバーイヤホンはドライバー間のネットワーク回路を用いて音の煮詰めを行っていくのが一般的ですが、AKGはK3003 ・N40、そして今回レビューしているN30のチューニングにおいては電気的なネットワークを一切使用せずにチューニングを行っているそう。そのため「自然な音のつながりを実現した」とのことですが、実際に聴いてみると言葉の意味を察することができます。誤解を恐れずに書くと、全ての音を意地でも解像しようとする音作りというよりは分離感のいい優秀なシングルドライバー機の音のような「ある程度の音のまとまり感」を感じる鳴らし方で、どの楽器の音も100%聴かせようとするタイプの音ではないなと感じています。

 

その上でまずは"REFERENCE SOUND"フィルター装着時の音の印象ですが、一言で言うとスッキリ系の少しハイ寄りなサウンド。シャープさを感じる高域は人によっては刺さり感や暴れ感を感じるかもしれませんが、非常に抜けが良くとてもさっぱりとした印象を受けます。ただ、音の硬さはモニター的な退屈さを感じさせる程ではありません。

 

中低域も同じような印象で筋肉質な硬めの音、低音のレスポンスは良い一方で広がり感を感じさせるタイプの低音ではありません。アニソンリスナー的にはボーカルが迫ってくるというよりはすっと浮き上がってくるような鳴らし方で音楽を気持ちよく聴かせてくれるタイプの音です。

 

一方の"BASS BOOST"フィルター装着時の音の印象はまさに「ベースブースト」。REFERENCE SOUND時よりもベースラインがくっきりとして、ドラムの押し出し感も強くなっています。ただ、面白いのがREFERENCE SOUND時に少し暴れ気味にも感じてしまうほどだった高域が抑えられることで聴きやすい音に変化するため、長時間のリスニングであればむしろこちらの方がいいのではないかと思ってしまう点。硬めの音のDAPを使っている方であれば低音過多になることもなく、コレはコレでアリなサウンドバランスだと思います。

 

また、N30はバンド・アイドル系のアニソンよりも個人的にはボーカル曲を聴くのがお気に入りです、特にREFERENCE SOUND時には顕著に。具体的には水樹奈々さんの深愛やPoppin'Partyの楽曲走り始めたばかりのキミに大塚紗英さんが歌うアコースティックバージョン(重要)がいい。この二曲、全然違う曲じゃねぇかという意見は無しでお願いします。

深愛

深愛

 

 

最後にN40との比較ですが、音の艶感や細かい部分の解像感など、正直なところN30とN40の間には価格なりの音の差もあると感じました。良くも悪くもN30の方が荒削り感のある音のため、予算や音の好みなど実際に聴き比べてみるのがやはりいいと思います。予算無制限なら正直N40を買っておいた方がいいかもしれません。

 

まとめ

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見た目も音もクールなN30、装着感も良くケーブルの取り回しもいいため生活に良く溶け込んでくれています。ただ、フィルター交換とイヤーピース交換、さらに選択肢は限られるもののリケーブルと細かい部分を詰めていくことでチューニングをさらに追い込んでいけるオーディオ的な楽しみも備えた一本だと思います。ハイエンドイヤホンを持った方の普段使い用イヤホン的な立ち位置もアリでしょうが、約3万円と「いいイヤホンを初めて買いたい」と思った方が手にするにも手が届かなくはない価格でもあるため、さっぱり系サウンドが好きな方にはこの価格帯の選択肢となりうる一本かもしれません。